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オオサンショウウオ先生の医療統計セミナー―臨床試験・メタアナリシス・疫学研究―

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講義の概要

 世界一のオオサンショウウオのコレクションが京都にある。西日本の河川ではオオサンショウウオ日本固有種と中国種の交雑が起きている。その対策として、中国種を捕獲し、環境を保全する活動が続けられている。捕獲された個体の一部は、研究のためホルマリン標本にされ、京都大学総合博物館に保存される。
この種のフィールドワークは、教育の貴重な機会である。京都大学西川研究室の学生は、毎月のようにオオサンショウウオを捕りに京都の河川に向う。専門はなにかと学生に尋ねれば、系統分類学と生物地理学と答えるだろう。学生が学ぶのは、しかし、教科書に書かれていることだけではない。フィールドワークの技術、データ解析・プログラミング、生態系を取り巻く社会・経済活動・法律など、周辺に広がる学問を五感で体験する。オオサンショウウオの統計を取るためにどうすればいいかを知るには、やってみるのが最短距離で、その経験は別の統計を取るときにだって役に立つ。
 前置きが長くなった。この講義「オオサンショウウオ先生の医療統計セミナー」は、「臨床医学の論文を読んでみたい」、「読んだとき方法や結果が正しく理解できているか自信がない」といった方に向けて、臨床医学で用いられる統計学を解説するものである。臨床医学において、統計学がもっとも活用されたのは臨床試験だったが、最近では疫学研究、データベース研究、メタアナリシスの方法論が著しく発展している。この講義はそれらをスコープに入れて、リツキシマブ臨床試験(Iijima, et al. Lancet 2014)、抗凝固薬メタアナリシス(Ruff, et al. Lancet 2014)、受動喫煙コホート研究(Tanaka, et al. BMJ 2015)という三つの論文と関連する三つのデータセットを題材に用いる。いずれも医療における治療方針や健康政策の科学的根拠になったものである。
 なぜオオサンショウウオか、と聞かれることがある。生物統計家は絶滅危惧種だから、などとこじつけて答えることが多いが、きっかけは桂川でオオサンショウウオを見つけたことだった。桂川水系では、まだ日本固有種の方が多い。その科学的根拠はなにか。それはオオサンショウウオの統計である。医療や健康問題を論じるときに科学的根拠という言葉が飛び交うが、大切なのはそれが具体的になにを指すかである。オオサンショウウオ捕獲のように、五感で学ぶ、とまではいかないが、論文とデータセットを活用して、科学的根拠がつくられる過程を臨場感を持って体験してほしい。

履修条件

医学論文を読むために必要な英語力

学習の内容を見る

第1週 データの記述

  • オリエンテーション
  • 連続データの解析
  • 2値・計数データの解析
  • 生存時間解析

 第2週 臨床試験

  • p値・サンプルサイズ計算
  • ランダム化
  • Intention-to-treatの原則
  • 臨床試験と規制

 第3週 メタアナリシス

  • 試験ごとのバイアスの評価
  • 公表バイアス
  • 固定効果モデルと変量効果モデル
  • サブグループ解析と交互作用の検定

 第4週 疫学研究

  • 散布図と回帰分析
  • ロジスティック回帰とROC曲線
  • コホート研究とケース・コントロール研究
  • 交絡とプロペンシティスコア

 教材1:論文

  • リツキシマブ臨床試験(Iijima, et al. Lancet 2014)
  • 抗凝固薬メタアナリシス(Ruff, et al. Lancet 2014)
  • 受動喫煙コホート研究(Tanaka, et al. BMJ 2015)

 教材2:データセット

  • リツキシマブ臨床試験データ
  • 抗凝固薬メタアナリシスデータ
  • 糸球体濾過率データ
  • リアリズム・ネオリベラリズムとの対比

講師

田中 司朗 Shiro Tanaka

田中 司朗 特定教授 | Shiro Tanaka

2008年 東京大学大学院医学系研究科健康科学看護学専攻博士課程修了(疫学・生物統計学教室)
2008年 京都大学医学部附属病院探索医療センター検証部(特定助教)
2012年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野(特定講師)
2015年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野(准教授)
2017年 京都大学大学院医学研究科臨床統計学(特定教授)
     日本計量生物学会責任試験統計家認定

耒海美穂 特定助教 | Miho Kimachi

2004年 北海道大学医学部卒
     北海道各地で内科医として勤務
2009年 北海道大学大学院医学研究科内科学講座免疫・代謝内科学分野
2012年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野(博士課程)
2015年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野(特定助教)
2017年 京都大学大学院医学研究科臨床統計学(兼任、特定助教)

清水さやか 特定助教 | Sayaka Shimizu

2006年 東京大学医学部医学科卒
2006年 総合病院国保旭中央病院(初期研修医)
2008年 総合病院国保旭中央病院総合診療内科(後期研修医)
2010年 聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科(任期付助教)
2013年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野(博士後期課程)
2015年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野(特定助教)
2017年 京都大学大学院医学研究科臨床統計学(兼任、特定助教)